人権を大切にする道徳教育研究会は、道徳教科書を使いつつも、それぞれの教材の問題点を明らかにするとともに、子どもたちがより豊かに考えを深めることのできるような授業展開の方法を研究し、提示したいと考えました。

人権を大切にする道徳教育研究会

「道徳教科書/もうひとつの指導案
ここが問題、こうしてみたら?」

「道徳」が「特別の教科 道徳」となり、小学校では2018年4月から検定教科書を使った授業が始まりました。また、教員は何らかの評価をしなければなりません。
小学校の道徳教科書は、基本的に文部科学省の道徳学習指導要領が定めた22の徳目(内容項目)にそって編集されていますが、その多くは戦前の「修身」教育で示されていたものと共通しています。

なぜ、「もうひとつの指導案」が必要なのか?

発行されている各社の教科書にはそれぞれ特徴はありますが、「人権の視点」から見ていくと、
いろいろな問題点が浮かび上がってきます。
まず、具体的な人権問題にかかわる教材が極めて少なく、
子どもたちが人権問題について考える機会がほとんどありません。
他方で、「自己犠牲」「公共の精神」の大切さが強調されており、「公」(集団や国家)が優先され、
民主主義社会の基礎である「個の尊重」も軽視されています。
また、「伝統文化」「愛国心」にかかわる教材も多く、「日本のすばらしさ」「日本人の優秀さ」が強調されています。
そのため、外国や外国人に対する優越感や排外意識を身につけてしまうことも十分に考えられます。

このような教科書を使って、ねらいや設問などの指針通りに授業をしていけば、
子どもたちは知らず知らずのうちに、「個」より「全体」、「多様性」より「一元的価値」、「共生」より「排他」という
偏った考えに陥ってしまうことが懸念されます。
その結果、「いじめ」や「差別」の解消につながるどころか、「いじめ」や「差別」を助長することにもなりかねません。

また、最初から目指す答えが明らかであるかのような教材、一つの答えへ誘導しているかのような教材など、
道徳の命である「考え、議論する」教材としてふさわしくないと思われるものも散見します。

そこで私たちは、道徳教科書を使いつつも、それぞれの教材の問題点を明らかにするとともに、その問題点を最小化し、
子どもたちがより豊かに考えを深めることのできるような授業展開の方法を研究し、このウェブサイトで提示したいと考えました。

私たちの「もうひとつの指導案」の特徴

私たちが道徳教育で大切にしたいものは、「人権・平和・共生」です。
世界中のすべての人が大切にされる社会のあり方を考え議論し、共に主権者として育つ道徳教育をめざします。

学習指導要領では「考え、議論する道徳」を推奨し、文部科学省は教科書に限らず広く教材を使用して欲しい、
指導方法を抑制的に考える必要はないとも言っています。
そのような意味からも、教員それぞれの工夫が求められています。

この「道徳教科書/もうひとつの指導案―ここが問題、こうしてみたら?」では、
各教材の問題点を明らかにし、その改善のヒントを提案し、必要に応じて補充資料を紹介します。
私たちは、現場教員のみなさんが私たちの提案を参考にして、自由に授業展開を考えてくださることが大切だと考えています。
ですから「もうひとつの指導案」と銘打ってはいますが、通常のような細かな授業案にはしていません。

また、「評価」の具体例を示す欄も設けていません。
これは教材に示された「徳目」にそって評価することによって、
結局は一定の結論に導くような誘導的な授業になることを防ぐためです。
「評価」は「徳目」のものさしによってではなく、子どもたちが真剣に考えたことそのものへの
「評価」であるべきだと私たちは考えます。

このウェブサイトは、「人権を大切にする道徳教育研究会」に集まった元教員や研究者が核となって運営しています。
まだまだ不十分ではありますが、趣旨に賛同してくださったみなさんが積極的に活用してくださり、
授業展開の一助となれば幸いです。

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