人権を大切にする道徳教育研究会は、小学校、中学校のもうひとつの道徳指導案を提示したいと考えました。

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なんだろう なんだろう「正義」ってなんだろう

1 本教材について
教材名
「なんだろう なんだろう 『正義』ってなんだろう」(光村図書 中学1年p.80「公正・公平・社会正義」「集団生活の充実」「国を愛する態度」)
▼本教材は、光村図書が小学校1年生から採用している「なんだろう なんだろう」シリーズである。読み物ではない、大変良い教材である。
▼この教材は今後いろいろな問題を考えていく際の「キーワード」を提供してくれている。
▼本教材を扱ったあと「いろんな立場の正義がある」と言える例を教材の中から探して取り扱うと、より具体的に、深く考えることができると思われる。たとえば光村図書の教科書でいえば、1年「言葉の向こうに」(教材番号15)、2年「『桃太郎』の鬼退治」(教材番号19)3年「2通の手紙」(教材番号4)などがある。

 

2 本教材を扱う際に特に注意すべきこと ▼抽象的に「正義」という言葉を定義し、一義的に理解させるようなことのないようにしたい。
▼本教材の目的は、「正義」といっても立場の違い(たとえば人と人、集団と集団、国と国の対立)などでなにが「正義」なのかよくわからない、「正義」というのは難しい、ということを理解し、これから具体的な場面で何が正義なのか、考えていこうという気持ちを育てることである。
参考資料 1.「正義」と聞いて思い出すこと                                   例文1「私は正義と聞くと、2018年に封切られた『虎狼の血』という映画を思い出す。役所広司が演じるベテラン悪徳刑事が『正義ってなんじゃ』と叫ぶのが印象深い」(「虎狼の血 公式サイトhttp://www.korou.jp/)   例文2「アンパンマンを思い出す。作者のやなせたかしさんは、正義について『正義とは実は簡単なことなのです。困っている人を助けること。ひもじい思いをしている人に、パンの一切れを差し出す行為を正義と呼ぶのです』『正義って相手を倒すことじゃないんですよ。アンパンマンもバイキンマンを殺したりしないでしょ。だってバイキンマンにはバイキンマンなりの正義を持っているかも知れないから』『ばいきんまんは人間社会に必要なのです。無菌状態ではかえって危ない。』などの言葉を残している。
2.イルカショーへの批判 ▼毎日新聞2018/9/12 2020年東京五輪に向けた最初のテスト大会となったセーリングのW杯江の島大会で、開会式で披露されたイルカショーを巡ってトラブルが起きた。大会実行委員会は江の島名物で歓迎の意を示したつもりだったが、国際セーリング連盟は海洋生物保護の観点から「落胆した」と批判。実行委は平謝りで、文化や考え方が異なる海外の人々を大勢受け入れる五輪・パラリンピック運営の難しさを浮き彫りにした。イルカショーが披露されたのは神奈川県藤沢市の新江ノ島水族館で9日夜に開催された開会式。選手や大会関係者の前で、同水族館で人気のあるイルカのパフォーマンスがあった。これを見た12年ロンドン五輪男子470級銀メダルのルーク・ペイシェンス(英国)がツイッターで「ショックを受けた」と投稿するなど、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などで選手らから当惑の声が広がった。 ▼日本の水族館のイルカは追い込み漁で捕らえたイルカがほとんどだという。欧米では野生のイルカを捕らえ、調教するのは動物愛護の精神に反する、という考えを持つ人が多い。文化の違いもあってイルカやクジラに対する感覚も異なる。
3.イラク戦争をめぐって 2001年9月11日にニューヨークで同時多発テロ事件が発生すると、アメリカは、テロ事件の首謀組織であるアルカイダとイラク政府がつながっていると考えるようになった。2002年にはブッシュ大統領が「イラン、北朝鮮、そしてイラクは悪の枢軸、テロ支援国家である」と演説。 イラクは大量破壊兵器を持っており、いつそれを使うかわからない、と人々の恐怖を煽った。国連の査察団はイラク国内に存在すると考えられていた大量破壊兵器を探すが、そのようなものは一向に見つからなかった。にもかかわらず、イラクを疑うアメリカは「サダム=フセインはテロ組織アルカイダと関係しているとみられる」という理由も付け加え、武力行使でイラク政府に制裁を与えることを決定した。国連安保理のなかでも、フランス、ドイツ、ロシア、中国などは軍事介入に反対。合意を得られないまま、アメリカやイギリスなどは有志連合を組み、3月17日にフセイン大統領らの即時国外退去を勧告した。これに応じなかったイラクへ、3月20日、アメリカは空爆という先制攻撃に踏み切った。この軍事作戦は「衝撃と畏怖」作戦と名付けられ、ブッシュは「悪に正義の制裁を」と演説。日本もアメリカに賛成し、自衛隊を支援活動に派遣した。一方、イラクのフセイン大統領は自らの戦争を聖戦と呼び、「我々は勝利を収める。敵の侵略と不正義は明らかだ」と演説したと言われる(公安調査庁HPより)。 戦争は50日で終わりフセインは逮捕され、後に処刑された。戦後、大量破壊兵器の捜索があらためて行われるが、とうとう発見できなかった。大量破壊兵器はなかったと考えられる。またアルカイダとのつながりもなかったとアメリカは後に認めた。この戦争で、2011年に撤退するまで、アメリカ側で4000人を超す戦死者が生まれた。大量のミサイルや爆弾が投入されたので、イラクにも多くの死者が生まれたが、その数さえはっきりしていない。
4.他者の目線を我が内に 東映取締役・白倉伸一郎さん 朝日新聞2019年10月8日           
白倉伸一郎さんは、「平成仮面ライダーシリーズ」のプロデューサー。従来の特撮ヒーローが持っていた「善悪二元論」に否定的な立場での作品が多いとされる。) 「正義の味方」という言葉を考えたのは元祖ヒーロー特撮、月光仮面を生んだ川内康範先生です。神仏ならぬ人間は、絶対に正しい「正義」にはなり得ない。せいぜいその味方である。そんな趣旨を語っています。私が関わった平成仮面ライダーシリーズも、「正義」とは慎重に向き合ってきました。 ライダー誕生はベトナム戦争末期。互いに「我こそ正義」と戦っても結論は出ない戦争。勝てば正しい、も違う。ライダーの背景はそんな世界観です。 宇宙人のウルトラマンのように超越した第三者なら、人と人の争いも裁けるのかも。でも同じ人間同士での解決法は結局、妥協しか残っていない。より良い妥協には、他者の目線を自分の中に持ち、考えることが大切。それが出来るのが「正義の味方」だと思います。
5.「怪獣使いと少年」のストーリー
母親が死に父親が行方不明になってしまった少年がいた。少年はあるとき怪獣に追いかけられるが不思議な男(「おじさん」)が現れ、怪獣を地中に閉じ込める。彼は宇宙人だった。少年とおじさんは廃墟に住み、まるで親子のように暮らすが、町の人に宇宙人ではないかと怪しまれ、少年はひどいいじめを受ける。ある日街の人たちが大挙して押しかけ、少年をつかまえようとするが、「おじさん」があらわれ、自分こそ宇宙人で少年はそうではないと叫ぶ。しかし、暴徒と化し、不安に駆られた街の人たちは「おじさん」を殺してしまう。「おじさん」が死んでしまったために地中に閉じ込められていた怪獣が暴れ出し、町を破壊しようとする。人々はウルトラマンに助けを求めるがウルトラマンは「勝手なことを言うな。怪獣を呼び出したのはあんた達だ。まるで金山さん(「おじさん」)の怒りが乗り移ったかのようだ…」と言って座り込んでしまう・・・・。(「帰ってきたウルトラマン9」円谷プロダクション)
指導案はPDFをご覧ください。ダウンロードできます。
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