小学校 道徳教科書の学校図書 かがやけみらい(小学校)の教材、「美しい空の勇者」の内容です。

小学校 道徳教科書

学校図書 かがやけみらい

美しい空の勇者

内容項目 主として集団や社会との関わりに関すること
勤労、公共の精神
学図6年活動_ページ_01
(1)本教材について ▼自己犠牲を美しくて勇気ある姿だとして描くことで,自己犠牲が「美しいこと」「勇気あること」「正しいこと」だと思いこませ,たとえ無謀な行為で命を落とすようなことになってしまったとしても,それを褒めたたえることによって,さもそれが「人としてすばらしい姿」であったかのような錯覚を刷り込む教育はとても怖いことだと感じました。自己犠牲を美化するこの教材の視点は,戦争中の軍国主義の精神に通じるのではないかとも思えます。
▼フカのいる海で機長が、出血が激しい足の傷を負った場合の補佐・代行は副機長が行うと航空法で義務づけられていることがこの教材では書かれていません。機長の代わりに最後まで見届ける義務があるのは副機長であり、淵上さんの判断で決めることではないことを子どもたちに知らせた上で、機長や淵上さんの行動の是非を考えさせたいと思います。
▼機長は淵上さんに「…早く脱出しなさい…。」と何度も繰り返し叫んだけれど,彼女はそれに対し「乗務員の義務を果たす」ために,乗務員全員の脱出を見届けて海に飛び込んだ,とあります。彼女の言う「乗務員の義務」とは何なのかは本文に書いてありません。副機長がいるのに他の乗務員の脱出を見届けることが淵上さんの義務であるとはとうてい考えられません。この場合,指揮統率,判断,意思決定(合意は必要だし,判断が間違っていれば意見を言うべきですが,そのようなことは書かれていません。)は,機長の役割です。緊急時に大切なのは,自分の役割をきちんと果たすことです。「自分がやらなければ」の気持ちで行動することは,返って被害を大きくしてしまうのではないでしょうか。この教材は子どもたちに自己犠牲を強いる方向に導く危険性があります。航空法の説明をした上で、淵上さんの行動の是非や,自己犠牲について考え議論することが必要です。
(2)本教材を扱う際に,特に注意すべきだと考えたこと 淵上さんの行動を機長は「美しい」「勇気ある」行動だと褒めたたえたけれど,本当にそうなのか,そうでないのか,自由に議論できるようにすることが必要です。「自分がやらなければ」という副題がつく教材名「美しい空の勇者」,それに,『活動』(別冊)の「考えよう」で「ロール機長から,『君は,日本の美しい空の勇者だ』とほめられた時,淵上さんはどんな気持ちだったでしょう。」,『みつめよう』では「自ら進んで仕事をして,それを成しとげた時,どんな喜びを感じましたか。」として,1で考察したような,淵上さんの行為について自己犠牲の是非について考える視点は無く,「自己犠牲の美しさ」に向けて考えを深めさせる構成になっています。 そこで,教科書は使わずに読み聞かせをするか,『活動』(別冊)は使わずにプリントにするか,どちらにしても「副題」「最後の3行,機長がほめたところ」は使用しないという選択をすることも考えられます。
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