小学校 道徳教科書の教育出版 はばたこう明日へ(小学校)の教材、「下町ボブスレー 町工場からのちょう戦」の内容です。

小学校 道徳教科書

教育出版 はばたこう明日へ
ホーム > 小学校 > 教育出版 はばたこう明日へ 小学校5年生 > 下町ボブスレー 町工場からのちょう戦

下町ボブスレー 町工場からのちょう戦

内容項目 主として集団や社会との関わりに関すること
伝統と文化の尊重、国や郷土を愛する態度
教育出版5年生_ページ_001
1.本教材について 教材名 
下町ボブスレー 町工場からのちょう戦 (教育出版5年p138 「国や郷土を愛する」)

▼教材は、大田区の町工場が「ものづくりの技術の高さ」を生かして、冬季オリンピック出場を目指して国産ボブスレー(以下「下町ボブスレー」)を開発していくという内容である。本教材の最後には、「2016年1月、ジャマイカチームが、2018年に韓国で開かれている平昌冬季オリンピックでの下町ボブスレーの採用を決めました」とある。しかし、実際2018年2月に行われた平昌冬季オリンピックでは、ジャマイカチームは「下町ボブスレー」を使用しなかった。この点で本文は事実と違う記述となっているので、教育出版は訂正しなければならない。このまま本教材を使用するのであれば、事実関係を補足して使用する他ない。 
▼本教材を読み進めるに当たって、町工場がどのような考えでボブスレー製作に挑戦してきたのか、読み取りたい。「下町ボブスレー」チームは、「ものづくりの技術の高さをアピールするために」、「大田区の町工場の知名度を上げ」るためにボブスレー製作にたどり着いたとある。そもそもオリンピック出場は、手段であって目的ではなかったのである。
▼一方、ジャマイカチームはオリンピックで好成績をあげることが最大の目標であることは明白である。つまり、「下町ボブスレー」チームとジャマイカチームとの間で、その目的において大きな齟齬があったと考えられる。
▼ジャマイカチームは、「使用契約」はありつつも、主に性能を理由に採用を見送った。報道を読んでいくと、「下町ボブスレー」の印象は、本教材文から受けるのと大きな違いあがる。教材文には、「ボブスレー日本代表の選手たちが、外国の選手たちから『日本は、ものづくりの国なのに、なぜ日本製のボブスレーを使わないのか。』といわれ、くやしい思いをしていた」とあるが、日本代表チームは、2015年11月の段階で早々と「下町ボブスレー」の採用を見送っていた。「下町ボブスレー」の性能を想像することのできる記述である。ジャマイカチームが「下町ボブスレー」を採用したのは、その2ヶ月後の2016年1月のことであった。日本のマスコミの中には、ジャマイカチームの契約違反を批判する意見があるが、冷静に事実関係を踏まえた上で、子どもたちに提示することが必要である。
2.本教材を扱う際に、特に注意すべきだと考えたこと ▼本教材は、「国や郷土を愛する」ことを学ばせる内容となっている。授業では、ジャマイカチームは、なぜ「下町ボブスレー」を採用しなかったのか、大田区の町工場の経営者たちはどうすればよかったのか問いかけ、「国際理解、国際親善」を考える教材として生かしていきたい。「主体的・対話的で深い学び」を実現するために、オープンエンドで考えることを大切にしたい。
▼本教材には、安倍首相が下町ボブスレーに乗って、「裏ピースサイン」をしている写真が掲載されている。道徳教科書に現役首相の写真が載っていること自体、例がない。一見すると本文とは関係のない安倍首相の写真が掲載されているのは、安倍首相が「下町ボブスレー作成プロジェクト」を推進していたからである。安倍首相の横で写真に写っている同プロジェクトのゼネラルマネジャーは、安倍首相に最も影響力のある中小企業社長と言われている。2013年2月、安倍首相は、国会施政方針演説でゼネラルマネジャーの名前を挙げて下町ボブスレーをPRしていた。安倍首相の支援表明によって100社以上のスポンサーがつくことになった経緯があった。この写真は、安倍首相の政治宣伝になる可能性が高く、掲載することは不適切である。すぐに削除すべきである。
▼しかも写真には、安倍首相などが、笑顔で「裏ピースサイン」をしている。「裏ピースサイン」には、侮辱的で挑発的、しかもセクハラ的な意味合いがある。特に、イギリス、アイルランド、オーストラリア、ニュージーランド、インド、そしてパキスタンでは、「裏ピースサイン」は中指を立てるハンドジェスチャー(性器を立てる)と同じ意味合いがある。日本では「裏ピースサイン」の意味があまり知られておらず、何気なく使われている場面を目にする。そんな中で首相が笑顔で「裏ピースサイン」をしている写真は、子どもたちに誤った認識を与えることとなる。その意味からも、この写真はすぐに削除すべきである。もし、この写真が削除されていなければ、その差別性について子どもたちに伝えることが必要である。
参考資料

[補足資料:『下町ボブスレー「不使用」 ジャマイカ「失格の恐れあった」』朝日新聞2018年2月7日] ① 2017年12月のワールドカップ時に輸送トラブルで「下町ボブスレー」が届かず、急遽ラトビア製そりで走り、驚異的に成績が伸びた。  ②ジャマイカ・ボブスレー連盟のストークス会長は「下町ボブスレー」について、「遅い」「安全でない」「機体検査に不合格」の3点を指摘し、「1月に行われた2度の機体検査に不合格だった。五輪でも失格の恐れがあった」と語った。 平昌五輪、下町ボブスレー土壇場で不採用の真相(ダイヤモンドオンライン)   http://diamond.jp/articles/-/159946 下町ボブスレーはなぜジャマイカに選ばれなかったのか? (美谷広海) http://blogos.com/article/279985/
指導案はPDFをご覧ください(ダウンロードできます)
©2018 人権を大切にする道徳教育研究会
pagetop