小学校 道徳教科書の教育出版 はばたこう明日へ(小学校)の教材、「米百俵(第2) 」の内容です。

小学校 道徳教科書

教育出版 はばたこう明日へ

米百俵(第2) 

内容項目 主として集団や社会との関わりに関すること
公正、公平、社会正義
教育出版6年生_ページ_001
1.本教材について ▼「米百俵」は、作家山本有三が1942(昭和17)年に長岡で歴史的事実を取材し、同年5月にラジオ放送 「隠れたる先覚者小林虎三郎」として発表した。翌年、戯曲「米百俵」を雑誌に掲載、これは同年6月 に単行本となったが、6万部を出したところで軍部などの批判をうけ、発禁処分となった。この教材は、その作品を元にしている。
▼山本は単行本『米・百俵』(新潮社、1943年)の初版はしがきにおいて、「『船をつくれ』『飛行機をつ くれ』と、人々はおお声で叫んでおります…しかし、それらにも劣らず大事なことは、『人物をつくれ』というこえではありますまいか」と書いている。したがって、「米百俵」は、教育基本法第2条第5項「国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと」にも合致するものである。
▼しかし近年、右派的な立場から「教育」を重視する目的でこれを取り上げたり、小泉純一郎首相が「聖 域なき構造改革」を訴える所信表明(’01)において、「今の痛みに耐えて明日を良くしようという『米 百俵の精神』」と強調したことで、この物語が広く知られることとなった。
2.本教材を扱う際に、特に注意すべきだと考えたこと ▼小泉元総理の「米百俵」のとらえ方を、あえて内容項目に当てはめるなら「主として自分自身に関する こと-希望と勇気、努力と強い意志」に属することになる。ただ「聖域なき構造改革」を訴えるために 彼がこれを利用したことは、同政策の問題点を不明瞭にした効果もあり、原作の矮小化と言うべきだろ う。したがって、前述の意義ある観点からこの教材の積極面を再度位置づけし直し、指導案を作成する ことが可能であるし、また必要でもあると考え、第1の指導案を提案した。
▼ただ、この教材を扱う学校図書も教育出版も「集団と社会-国家と郷土」へと結びつけ、「公私」の対立に落とし込み、教育という「公」的利益と食料確保における「私」的欲求を対立させた上で、「公」に「私」を従属させようとする目的をもって編集していると思われる側面がある。とくに学校図書は、武士たちの「おおっ、これで久しぶりに米が食えるぞ」という台詞を載せ、「私」的欲求を批判し、「公」的価値へ結びつける方向へ誘導しようとしているように思える。ただ、ここで私たちが「私」的立場を擁護しても、あまり説得力は持たないと考える(参考資料b)。むしろそれを克服するには、もうひとつの「公」を立ちあげる(第2の展開のようにインフラや医療を例示し、内容項目では「公正・公平・社会正義」の観点を加える)ことで、より普遍的な「公」をめざす「個」の確立が可能になると考え、第2の指導案とした。
▼この教材は、以上の2側面をもつため、合計2時間を使うことが望ましいと考える。
 
指導案はPDFをご覧ください。
参考資料
a.山本有三『米百俵』新潮文庫、2001年7月
b.上杉 聰「『個』は国家を超える」『脱戦争論』東方出版、2000年5月
©2018 人権を大切にする道徳教育研究会
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