小学校 道徳教科書の東京書籍  新しいどうとく(小学校)の教材、「るっぺ どうしたの  A案 」の内容です。

小学校 道徳教科書

東京書籍  新しいどうとく

るっぺ どうしたの  A案 

内容項目 主として自分自身に関すること
(本案)→主として人との関わりに関すること
主として集団や社会の関わりに関すること
節度、節制
(本案)→親切、思いやり  友情、信頼  より良い学校生活、集団生活の充実
東京書籍  新しいどうとく
1.本教材について(教材の問題点を中心に)
▼「わたしたちの道徳」(1・2年)に掲載されていた教材である。道徳が目指すことを「セルフコントロール」と考えるなら、典型的な「道徳的教材」と言える。
▼るっぺは、冒頭に書かれているように、だらしなく、人に迷惑をかける子として描かれている。しかし、そのような《特性》を持つ子はどのクラスにもいる。どの学年にも、大人にだっている。そのるっぺを悪い子の見本のように扱って子ども達を正していくやり方は、一方でそういった子に対する差別を生み出していくことにもなる。たとえば作文指導で、ある子の作文を悪い見本として指導を行うような差別的な授業となりかねない。実際、「るっぺのようにならんとこうね」という言葉を合言葉にして学級経営をした先生もいたそうだ。もしるっぺと同じような子にマイナスのレッテルを貼ってしまうような教材の扱い方をすれば、それはとんでもなく「差別的」な教材になってしまう。
▼①朝起こされてもなかなか起きない、②靴のかかとを踏んでいたり、ランドセルをちゃんと閉めずにいて中の物をまき散らかす、③砂場で砂を投げて他の子に迷惑をかける、注意されても聞かない、という、大まかに3つの行動を考えさせる教材だが、③は明らかに人に迷惑をかけている行為であるのに対し、①②は本人の生活習慣的な課題である。3つとも同列に扱うべきか疑問である。
▼朝起きにくい、整理整頓が苦手、宿題をやってこない、忘れ物が多いなど、それぞれに本人も努力して克服すべき課題ではあるが、そのようになってしまうのは本人の心がけや努力以前の、家庭的要因や、その子が持っている《特性》(協調・適応しにくい強い個性、発達障害を含む様々な障害)に起因していることも考えられる。にもかかわらず、こういった態度・行為をする子は「不道徳」であるような印象を与えてしまうこの教材は、指導や授業以前に、「差別性」をはらんでおり、普通に授業すれば、差別的な授業展開になりかねない。
▼「差別的」な授業展開に陥る原因の一つに、「るっぺの行動・態度をどう思うか?」といった発問で、子ども達に「るっぺの評価」をさせることが考えられる(市販の指導本や解説書にもそういった展開がしばしば見られる)。そのためにるっぺは「悪者」になり、子ども達は自分のことはさておいて、上から目線の意見を言ったり批判をすることになる。
▼また、いじわる・いじめをする子を「生来の性悪な子」というステレオタイプに作り上げることにも「るっぺ」教材は一役買っているように思える。乱暴でガサツな悪い子の典型を作り出すことで、「いじめはそのような子がするもので、自分たちには関係ない」という意識にもつながっていく。
2.本教材実践のヒント(改善への方向性) ▼できるだけるっぺを批判的にとらえさせないように発問を工夫する。「こんなるっぺをどう思う?」と問えば、自分自身のことを差し置いて、高見からの評論になってしまう。ここは「あなたはるっぺと同じようなことをすることはないだろうか?」と問うべき。考えさせるべきは自分自身のこと。自分を見つめさせ、るっぺの行動・態度と似たものを自分の中に認めることが第一歩である。それができれば、るっぺだけが悪者にはなりにくい。
▼①朝なかなか起きない、②靴のかかとを踏んでいたり、ランドセルをちゃんと閉めずにいる、③砂を投げて他の子に迷惑をかける、この3つの内、①②は自分自身の課題であり、③だけが他の人に迷惑をかけたり、傷つけたりする問題であることを押さえた上で、「るっぺは、なぜ③のようなことをするのか?」と考えさせる。るっぺの行為の背景を想像することで、「悪い子」という単純なレッテルを外させていく作業である。
▼道徳的には、セルフコントロールをねらう教材であるが、そこで終わらず、人権のねらいである「共生」まで発展させたい。それができれば自ずと道徳のねらいも達成されるだろう。
▼最後は展望をもたせたい。るっぺを「なかま」として受け入れることが、るっぺの課題を解決する大きな力になること、そして自分たちの成長にもつながっていくことに気づいて欲しい。
参考資料

別紙のようなワークシートを作って、考えるヒントにしたり、まとめに使う。

指導案と参考資料はPDFをご覧ください。
参考資料
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